「学びのプロセスの可視化」を実現させるために、キャシー・ハーシュ=パセック教授らが提唱する「6Cs」の考え方を取り入れ、そのアセスメントツールとして、ストーリーパークを導入しています。クランテテ三田 校長 松村様、副校長 岩崎様、寺崎様、西村様お話をお伺いしました。
「クランテテ三田」、東京都港区にて、学研グループと市進グループの共同事業として、2013年に開校しました。
プリスクール・学童保育を運営し、子どもの主体性を育むことを目標に、モンテッソーリ教育をベースにしたカリキュラムを構築されています。
「学びのプロセスの可視化」を実現させるために、キャシー・ハーシュ=パセック教授らが提唱する「6Cs」の考え方を取り入れ、そのアセスメントツールとして、ストーリーパークを導入されました。
——「クランテテ三田」開校への思い、モンテッソーリ教育をベースにした背景について教えてください
小学校受験など直近のゴールを設定する、教育ビジネスが厳然として存在する中で、我々は何を目指すのか。
学研グループも市進グループも、子どもが自ら育ち学ぶための「学びたくなる学び」の環境を提供することを大切にしてきました。
これは学研グループが長年、普及を推進してきたモンテッソーリ教育の理念に通じます。そのためモンテッソーリ教育を、両グループの共同によって立ち上げる『クランテテ』という新しい教育託児施設の柱に据えて、豊かな体験の場を提供することを目標にしてまいりました。
——6Csを導入したきっかけは何ですか?
私たちが感じていた最も大きな課題は、幼児教育は学びの成果が見えにくいため、保護者と私たち保育者の間で、子どもの成長と学びのプロセスをいかに共有するかという点です。
子どもたちは遊びながら学んでいます。私たちは子どもたちの日常の中で、どのように「遊び」が「学び」につながっているかをご家庭に伝える責任があります。学びのプロセスを可視化し、子どもの成長を共に喜び合うための評価基準を求めていました。
その中で出会ったのが、テンプル大学心理学部教授のキャシー・ハーシュ=パセック氏が提唱されている「6Cs」です。
6Csは「Playful Learning(遊びを通した学び)」を通して子どもが獲得するスキルを6つに細分化し、さらにそれぞれのスキルを4段階のレベルでとらえます。
私たちは、子どもたちの周りにいるすべての大人(保育者や両親)が、子どもたちの「今」を、共感を持って受け止め、想いを共有しながら寄り添うための共通言語を持ちたいという想いから、子どもたちの活動を記録・共有・分析する「教育的ドキュメーション」を試行錯誤しながら実践してきました。
—キャシー教授は”Guided Play”ということばを使われています。
「Guide = 提案する、誘導する」という要素はクランテテ三田の教育に影響していると思いますか?
モンテッソーリ教育の「子どもを観察し、環境を通して対話する」という考え方は、”優れたGuided Playだ”とキャシー教授も仰っています。
私たちは、6Csを通して子どもたち一人ひとりの現在地を把握し、モンテッソーリ教育の環境を通して適切なサポートをすることを目指しています。私たちにとってモンテッソーリ教育と6Csは密接に関わり合っています。
——なるほど。そこから、ストーリーパークの導入に繋がった経緯は何でしょう?
モンテッソーリ教育によって育つ子ども一人ひとりの成長をどのように可視化するかを考え続けていた時に、キャシー教授の著書「科学が教える、子育て成功への道」に出会い、翻訳者の市川力氏が初代校長を務めていた東京コミュニティスクールにも関心を持ち、その流れで、ストーリーパークを知りました。
注釈)全日制マイクロスクール「東京コミュニティスクール」でも、ストーリーパークを導入しています。
——6Csをきっかけにストーリーパークを知ってくださったのですね!
ストーリーパークの特長はどこにあると思いますか?
ストーリーパークの「ラーニングタグ」機能は素晴らしい価値観だと思います。
「ラーニングタグ」を使って、その子がどの段階にいるのかを記録し、保護者と保育者で共有できると考えました。
——その「ラーニングタグ」の活用について教えてください。
「6Cs」において一番低いレベル1の段階も重要な土台と捉えており、すべてポジティブな成長の過程です。レベルごとに、どのような子どもの姿が現れるか、具体的な行動に落とし込んで設定した評価表(ルーブリック)を見て、保育者は「この子は今どのレベルにあるのか」を選択します。
例えば、ある子について、6Csのうちの「Communication」のレベル1の段階だと、担当の保育者が評価したとします。その保育者は、ストーリーパーク上で、その時のエピソードと共に”Communication レベル1”のタグを付けて投稿します。
エピソードと6Csを結びつけることで、保育者は6Csのメガネを通して、子どもにどんな学びが生まれたか、そして、次にその子に対して、どのようなサポートをすれば良いかを考え、職員同士で話し合うことができます。
6Csを共通言語として保育観を共有し、保育者同士で学び合うことができるのです。
ラーニングタグは、6Csだけでなく、学年やクラスに関するもの、日常生活の練習・感覚・言語・算数・文化・などモンテッソーリ教育の活動に関するもの、英語・運動などの知識・技能に関するものなども設定しています。
タグごとに注釈を記載することができるため、保育者は選択しやすくなっています。
——保護者様とのコミュニケーションにおいては、ストーリーパークはどのような存在ですか?
「学びの現在地を保護者と共有できるツール」です。
「家でもこういうことをやりました」という保護者とのやりとりも生まれてきました。
保護者が「子どもが楽しく遊んでいて微笑ましい」と感じただけで終わると、プロとしての保育者の存在意義はどこにあるのか、となります。
子どものある瞬間を切り取り、「こういう学びがあると私たちは考えています」と保護者に伝えることはとても重要です。そして保護者からレスポンスをもらうことで、まさにコミュニティ形成に繋がると思います。
——保護者様の反応はいかがですか?
写真・動画で見られることへの好評もありますが、6Csについて説明したことで、保護者も「こういうことだったんですね、これからラーニングタグについても注目していきます」という言葉をいただきました。
「学びのプロセス」に対する視点を、保護者も得たように感じます。
また、「癒されました」「振り返ることができました」と仰る保護者もいます。
子どもを見つめる、振り返るきっかけにもなっているようです。
——先生方の反応はいかがですか?
入力は慣れれば、携帯をいじっているような感覚です。
どのタグを選択したか、投稿前に、複数の職員で承認作業するようにしています。
活動を見ていた職員は一人ではないので、そこで、観察がずれていないかどうか、複数の目で見て、擦り合わせるようにしています。
——職員様同士のやりとりにも活用いただいているのですね!
貴重なお話しをありがとうございました。
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「科学が教える、子育て成功への道」翻訳者の市川力氏を迎え、クランテテ三田の実践例を取り上げます。